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【連載】心のラジオ、COCOらじ 《Vol.13秋号》

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    ヴィクトール・フランクルがアウシュヴィッツ収容所で捕虜として捕えられていた時の話です。ある日、ヴィクトールは不思議なことを目にします。クリスマスの日が近づくにつれ、毎日のように亡くなっている人の数が減っていき、クリスマスが過ぎたら今度は、収容所の中の死者の数が徐々に増え、やがて以前の状態に戻ることでした。収容所の生活で死の恐怖を目の当たりにしていた彼にとって、このような現象はとても不思議なことでした。

    死の直前の終戦によって幸い命を救った彼は、収容所で経験した現象について研究し、このように記録します。「いつ死んでもおかしくなかった収容所の人々が、その苦しい環境の中でもなぜ生きようとし、なぜ生きられたのか。おそらく彼らの心の中には「ある希望」があった。収容所の人々は、クリスマスが近づくことでクリスマス前には戦争が終わるだろうという希望を持ち、それが彼らに生きる力を与えてくれた。ところが、クリスマスが過ぎても戦争が終わらないのを見ながら、希望を失い、生きる気力さえも無くした。もちろん、彼らはクリスマスに対しての意味づけや希望を最初から持ってなかったならば、すでに亡くなっていたかもしれない」と。

    この話しは、私たちにあるメッセージを伝えてくれます。それは、私たちの現実がいかに大変な時であっても、その現実に対する意味づけ、すなわち、おかれた環境への心の姿勢がとても大切だということを。仮に、この世界が私に試練を与え、大切なものを奪っていたとしても、しかし決して奪い取れないものが一つあります。それは、与えられた現実をどのように受け入れるか、どんな意味づけするかに対する「心の選択」です。

    あなたにとって「選択」はどんな意味を持った言葉でしょうか。一般的に「選択」を「良いものがたくさんある中で、最も良いものを1つ選ぶこと」だと思ったりしますが、それだけではありません。「選択」とは、「最も価値あるもの(BEST)のために、その他(SECOND BEST)のものから手放すこと、最も大切なもののために、そうではないものをあきらめること」です。前回にご紹介した「サルと壷」の話がまさにそうです。手放せる心、あきらめられる心は、内面の成熟や人の柔らかさを表す大きな物差しです。

    あなたにとって最も価値あるものは何でしょうか。それを選択したいならば、手放すべきものの存在にも気づいてください。欲しいものをすべて手に入れようとする心では、生きる喜びや幸せな人生を得ることができません。幸せは、たくさん手に入れた「所有」にあるのではなく、所有を乗り越えた「自由」にあることをお忘れなく。
    次回では、「しなやかな心で生きるために」についてお話します。



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