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【連載】健保の窓《NO.199》 ◆許し(forgiveness)の意味

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    許し(forgiveness)の意味

    人を許す力は、人としての自分の価値を測る大きな物差し -マクスウェル・マルツ-

    私たちは、人とのつながりの中で生きています。人とのつながりは、時には幸せを、時には苦しさを与えてくれます。つながりには、「幸せと不幸」を作り出す力があります。

    私たちは人から傷つけられた時、怒りを覚え、復讐したくなる誘惑に陥ります。復讐は、さらなる悪循環を生み出し、やがてお互いの(特に自分の)精神的、身体的、社会的健康を奪います。心を苦しめる負の感情(怒り、憎しみ、恨み、疑いなど)を持ち続けることは、心身の健康を損なう要因を与え、頭痛や腹痛、場合によっては高血圧、心疾患などの病を引き起こしたりします。人が健康で生きるためには、これらの負の感情を適切に処理すべきであり、そこには「許し」の存在が大きなキーワードとしてあります。

    では、「許し」とは何でしょうか?簡単に整理してみましょう。
    「許し」とは、「記憶の消失」ではありません。私たちは、人を許すことを「相手から受けた痛みと悲しみを記憶から消すこと」と思ったりしますが、正しい理解ではありません。たとえ、いくら相手のことを許したとしても頭の中で記憶が消されることはないのです。
    「許し」とは、「自己犠牲」でもありません。親や配偶者、他の誰かを許すことを「自分だけが必死に我慢し、無理して笑い、苦しい感情を抑えれば良い」ということで理解してはいけません。
    「許し」とは、「和解」の意味でもありません。即ち、相手のことを許したからといって、必ず、仲直りをしなければならない義務はないのです。私たちの中で許しを難しく考えてしまう理由の1つに、「許し=和解」と、誤って解釈していることがあります。

    「許し」には、「選択と和解」の2つの種類があります。「選択」は、本人自らの決断による許しで、本人が「健康的に生きるため」に選んだ宣言です。「和解」は、お互いの関係を「どう回復(仲直り)するのか」に関わるものです。「和解」は、1人ではなく2人以上の感情的受容が必要となるので、場合によっては長い時間がかかったりします。「選択と和解」は同じものではなく、許しの時にこの2つが伴うことも、そうでもないこともあります。だから、「選択」は本人の心の中に、「和解」は関係の中に存在していると言えます。

    「許すこと」は、人が健康に生きるためには重要であると、多くの研究で指摘されています。精神科医であったヴィクトール・フランクル氏は、"人間が奪われない唯一の自由は、選択である"と話しました。許す選択は、強制的にできるものでもなく、すべてが本人の意思です。自由な心を求めているなら、相手を心から許せる道を探しているなら、まずは、心の中で「あなたを許します」と宣言することです。次号では、「許しという私へのプレゼント」をテーマにお話します。



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