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【連載】健保の窓《NO.197》 ◆自分との向き合いⅣ・Ⅴ(主体性と反射対象) 

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    自分との向き合いⅣ・Ⅴ ~主体性を考える・反射対象をおく~ 

    自分の主体性を考えることは、他人と自分の評価の間で「本当の自分はどっちなのか?」、を自問自答することです。要するに、「あなたはどんな人?あなたの考えは?あなたの価値は?」のようなアイデンティティが問われる場面で、それに対して主体性を失われず、ちゃんと答えを見出せることです。主体性が丈夫な人が、心が健康という話もありますが、これは判断や選択の主体(自己)を知覚し、「相手の意見に単に自分を委ねてしまわない(色に染まらない)こと」や「過去の記憶(心の傷)が現在の自分の価値判断を左右させないように抵抗する」ことを意味しているでしょう。この主体性が揺れる時、人には精神的危機が訪れます。自分への信頼や価値、尊厳が揺れることは、生きる方向性を失くしたかのような不安を与え、出口がない暗いトンネルの中に閉じ込められた苦痛を与えます。

    相談に来られる方の多くに、「主体性の乱れ」の問題が絡んであることに気づきます。相手からの「頼みこと」や「期待されること」、あるいは「批判されること」に、本当はすごく嫌なのに嫌とは言えず、関係性の崩壊を恐れてただ合わせてしまう人がいます。その時に、私が伝えることは、"自分の思いを相手に伝えることを恐れないでください。相手を無視・批判するためのあなたの意見でなければ、あなたの正直な思いや感情はお互いの関係性を丈夫にさせるものになります。もし、あなたの素直さによって相手からの愛情や信頼を失うことがあるなら、もしかしたら、その関係はあなたの人生において、それほど大切ではなかった可能性が高いです。自分が主体となって生きた時間だけが、自分の人生になることを忘れずに、自分の時間や思い、感情を大事にしてあげてください。"と。

    向き合いのためにもう一つ大事なものは、自己反射対象(mirroring self object)の存在です。ハインツ・コフート(精神分析家)は、"人間には鏡のような人物が必要だ"と言いました。つまり、自分の良い面を照らし、励ましてくれる人は、誰でも必要という意味です。劣等感が強く、(いかに)簡単に傷付き、自己嫌悪になりやすい人は、幼児期のごろから自分の価値を認めてくれる「鏡」に巡り合えなかった可能性が多いと言います。人は自分の大切さや価値がわからないまま生まれるため、これらを教えてくれる人が必要です。一般的に子どもは、親(特に母)との関係で自分の姿を見ながら、健康な自己愛(healthy narcissism)を形成しますが、これが人格の核となって精神的に丈夫な人、立ち直りが早い人、自尊感情が高い人を作ります。自己反射対象は、年齢や性別、病気の有無とは関係なく、人なら誰でも必要です。生きる中で自信をなくし、自分が嫌いになった時、その自分を非難して責めるより、安心感と励ましをしてくれる人。

    あなたには、鏡の役をしてくれる人がいますか?あなたの苦しみを自分の涙に変え、心から話し合える人。あなたを批判して評価するよりも、あなたの可能性を示してくれる人。もし、いるのならあなたは幸せでしょう。いないのであれば、あなた自身が今から誰かの鏡役になることです。鏡を得るためには、そこが出発点だからです。次号には、自分との向き合いⅥ (自分から行動する)について、ご紹介します。


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