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【連載】健保の窓《NO.198》 ◆自分との向き合いⅥ(自分から行動する)

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    自分との向き合いⅥ ~自分から行動する~

    「どんな人が精神的に健康な人なんだろうか?」と、皆さんは考えたことがありますか。周りにこの質問をすると、多くの場合「好きなことができる人」、「悩みがない人」、「笑える人」、あるいは「生活の不満がない人」などのような答えが返ってきます。確かにこういう状態では、誰でも心穏やかに見えるし、幸せそうにも見えるかもしれません。しかし、少し考えてみましょう。果たして、悩みや問題がない人が精神的に健康な人だと言い切れるでしょうか?そもそも、悩みや問題がない人が存在しているのでしょうか?

    精神分析家であったアンナ・プロイト氏は、「精神的に健康な人は、悩みがない人ではなく自分の悩みと上手に付き合える人」と、言いました。この話には、「人間である限り人生の苦しみや悩みから自由になれる人はいなく、悩みの個人差はあるものの誰もが経験する。だから抱えている問題を正しく理解し、適切に処理して生きなければならない」というメッセージが含まれているのかもしれません。

    しかし、私たちの中には「悩みや問題がない人生、豊かな環境、不満がない生活」などを精神的健康に絶対的な必須条件として考え、これらの有無にとても敏感に反応したりします。以前、相談に来られたSさんも同様で、本人は精神的不調の原因を「周りの環境(親や家族、上司、同僚すべて)のせいだと頑なに信じ、結果、本人の人生は狂ってしまった」と話していました。Sさんは相談中、口癖のように「自分を取り囲む環境さえ変われば、すべての問題は改善でき、楽しく暮らせるのに」とつぶやいていました。しかし、相談を重ねるたびに、実は問題の要因は周りではなく、自分の中にあることに気づきました。その後、Sさんは問題の要因を外ではなく自分の中で探そうとする姿勢(心理学的心性:psychological mindedness)を見せ、この姿勢によって自己理解が深まり、認知の歪みによって生じた偏った判断と向き合えることができました。

    自分から行動することは、決して新しいことではありません。人の過ちを見る前に、まずは自分の矛盾に目を向ける、人を批判する前に、まずは自分のトゲに気づく、この社会で皆とともに生きるために極めて本質的な部分であり、大切な心の姿勢です。自分と周りを変える力は、外から得るものではなく、自分の中にすでに存在していることを忘れないで下さい。

    以上、これまで4回にわたり、自分との向き合いの6つのプロセスについて説明しました。さらに、もう1つの重要なものがあります。それは、向き合いの過程で現れる「許し:forgiveness」の問題です。次号では、上手な向き合いのために必要な「許しの意味」について考える時間を持ちます。


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