画鋲とカラーマグネット、そして壁の笑顔
人の悪口や怒りの言葉、批判ばかりしていると徐々に脳はダメージを受け、将来的に認知症などを誘発するリスクが高まることを聞いたことありますか?
アンナ・マイヤ・トルパネン博士(東フィンランド大学の脳神経学者)は、平均年齢71歳の1449人を対象に言葉と認知症発症の関係を調べてみました。
まず、参加者に「出世するために皆が嘘をついている」「人は信用できない」「人は自分の利益になることにしか積極的に動かない」などの世間や他人に対する皮肉・批判度を測り、同時に認知症テストも行いました。
彼の研究によると、「人は利己的関心の以外は動かない、誰も信用できない」と強く信じている人は、それほどでもない人に比べ、認知症のリスクが約3倍も高まるそうです(高血圧や禁煙などの他の影響因子を調整した上での数値)。
逆に、人から謝罪を受けると脳の攻撃性が和らぐなどの他の研究結果もあるなど、言葉と脳の関連性をいろんな視点から調べる研究が多く行われています。
言葉を発する行為は、私たちが思っている以上に脳への影響が強く、ポジティブ言葉やネガティブ言葉によって受ける心と体の影響がそれほど大きいということを意味することだと思います。
話は変わりますが、最近とてもおしゃれな画鋲が増えてきました。
ひまわりの形、黄色く可愛いスマイルの形など、一昔前の丸い金属の形からだいぶん可愛い姿に変わってきたのです。
しかし、どんなに可愛い形をしたとしてもある条件が伴わないとその姿を見ることはできません。
その条件とは、画鋲の針を受け入れてくれる壁の存在です。
鋭い針を受け入れてくれる壁、その存在のおかげで画鋲は外の世界とまっすぐに向き合い、素敵な自分の姿を見せることができるのです。
画鋲にとって壁はかけがえのない存在と言えるでしょう。
もちろん、壁には深い傷跡が残ります。
画鋲が自分の安定だけを求めて何度も刺し続けるのであれば、壁の傷口は広がり、結局、画鋲も不安定になります。
この現象は、人間社会でも同様に起こるものです。
人は誰かの壁であり、また画鋲としても生きるのです。
楽しく明るい笑顔で生きる裏側には自分の刺々しい言葉や傷を受け入れて守ってくれる壁の存在があるはずですし、その逆も言えます。
最近は、カラーマグネットも素敵な姿になりました。
画鋲のように刺すことなく、歩み寄りながら上手に距離感を取るカラーマグネット。
人の生活を支える生活用品もこのように変わってきているのであれば、人も時間とともに誰かを傷つけるよりも傷や汚れを隠してあげる関係に発展しくことはとても素敵だと思います。
次号では、「適切な距離感としなやかな生き方-エピソードは人と人をつなぐ橋-」についてお話します。